【社内対談】SQUEEZEならではのレベニューマネジメントシステムで業界を変えたい
SQUEEZEでは、自社に加え多くの宿泊施設でもご利用いただいている宿泊管理システム「suitebook」の機能向上のひとつとして、レベニューマネジメントにも力を入れています。
今回は運営ホテルにおけるレベニューマネジメントやプロダクト開発を推進する新井と堀口の対談をお届けします。
「プロダクト開発を通して、業界全体の在り方を変えていきたい」という2人の熱い思いをお聞きください!
プロフィール
レベニューマネジメント機能の強化に向けて第一人者がジョイン
―まずは簡単に自己紹介をお願いします!
新井:CTOとして、プロダクト開発やお客様へのソリューション提供事業全体を管掌しています。クラウド型宿泊管理システム「suitebook(スイートブック)」の開発当初から携わっていますが、現在はプロダクトの構想や、SQUEEZEの提供するソリューション全体の事業推進、営業戦略のリードなどに注力しています。中でも今期は特にレベニューマネジメント機能を強化するために、かねてからレベニューマネジメントのスペシャリストとして第一線を走り続ける堀口さんにSQUEEZEにジョインしていただくことになりました。
堀口:長年レベニューマネジメントに関わり、そのノウハウを業界に還元していきたいと思い、コンサルタントを始めました。レベニューマネジメントの使いやすいシステムがなくて、亜欧堂ではExcelを使っていました。既存のシステムは導入のハードルが高くて、PMS(Property Management System、宿泊管理システム)ごと入れ替える必要があったりします。レベニューマネジメントをシステムで行うには、システムの設計段階から関わらないと、求めるものは作れません。SQUEEZEであれば、これまでの知見や経験を活かし、レベニューマネジメントにおいて今までにないようなシステムの開発ができるのではと大きな可能性を感じ、入社しました。
新井:作るからには、日本で一番優れたレベニューマネジメントシステムを目指して、試行錯誤しています。堀口さんの知見やアイデアで、オペレーションも改善されて、プロダクトに生きてくるなと実感しています。
SQUEEZEの文化はオープンで、全員が同じ方向を見ている
―SQUEEZEにジョインした今の率直な感想を聞かせてください。
堀口:思っていた以上に面白い企業で、カルチャーも素晴らしい。内部にも情報を出したくない企業もある中で、SQUEEZEはオープンであることを大事にしています。興味がある分野に対して積極的に関わっていけるのがとても魅力です。その結果、話が広がって、より良いアウトプットに繋がると感じているので、このオープンなカルチャーはいいなと思いますね。
CEOの舘林さんの現場への解像度の高さもすごい。細部のオペレーションにまで目を配り、ビジョンを持って発言している。私はこれまで現場に対して、ああだこうだと叱責するタイプの経営者を何人も見てきましたが、舘林さんはロジックに基づいた問いかけをしているのだと思う。あのスピード感についていけるようなチームへ、自分自身も含めて早く持っていきたいと思います。
長年のレベニューマネジメント機能開発の構想がついに動き出した
―レベニューマネジメント機能に関する構想はどれぐらい前からあったんですか。
新井:創業当初の民泊事業のときからありました。ホテルの売り上げを左右する一番大事なものの一つだから、そこにテクノロジーを活用しなくてはと考えていました。2017年に自社ブランドのホテル「Minn」を始めたときから話し合っていましたが、コロナ禍の影響で一時中断しました。しかし、昨年の春頃から宿泊需要が戻り、開業も続いていたので、冬にはコロナが落ち着いたこともあり、本格的に取り組むことができました。
―このタイミングで堀口さんが入ってくれたのはすごく大きいですね。
新井:本当に大きいです。僕自身がレベニューマネジメントについて詳しくなろうと独学で学んだりもしていましたが、経験がものを言うところも大きいと感じていました。そのため、アドバイザー的な人を探していたものの、日本でレベニューマネジメントを学問としてしっかり習得し実践した方があまりいない、現実的に頼れる存在がなかなか見つかりませんでした。
―堀口さんから、「本当に良いシステムを作りたいなら自分で開発に携わるしかない」というお話がありましたが、どういうところに課題感があるのか、もう少し詳しく伺いたいです。
堀口:レベニューマネジメントとダイナミックプライシングは、同じものととらえられがちですが、私の中での整理は、レベニューマネジメントは予測があって売り方を変えることです。一方でダイナミックプライシングは、何か特定のトリガーがあって料金を変えることです。日本のほとんどのホテルが行っているのは、ダイナミックプライシングで、競合が料金を下げたから自社も下げる、ピックアップ(予約増加)によって料金を上げるといったことが主流です。
本来のレベニューマネジメントは予測をもとに売り方を変えるものです。フォーキャスト(需要予測)ができるようになったら、レベニューがより高度化されます。フォーキャストはロジックが不可欠だし、ロジックがわかっていても人の手でやるとなるととても大変なので、そこはシステム化したい。
亜欧堂時代には、PMSからデータを取り出してExcelで加工し、フォーキャストしていましたが、データを正確に取り出し、フォーキャストに適した形に整える工程が必要でした。エクセルでは作業に時間もかかります。より効率化して、その空いた時間を戦略策定などに充てるべきです。
しかし、国内のシステムは機能的に不十分だったり、いいものは値段が高かったり、PMSごと入れ替えないと効果を発揮しない場合があります。もっと広くみんなが使えるようなシステムが欲しいと思います。
SQUEEZEならではのレベニューマネジメントシステムとは?
―現時点で取り組めている領域や想定通り進めている機能などありますか?
新井:施設が約30棟になると、データを毎日追うのは難しいので、何か異常を検知したときにのみ、プッシュ通知で詳細データを送る仕組みを導入しました。また、システムが自動で売り止めをかけて、売れすぎを防ぐ機能も実装しました。このような取り組みのおかげで、昨年の秋から施設が増えているにもかかわらず、レベニュー・マーケティング部門の人員を増やすことなく運営できています。ピックアップレポートを日々確認していたのが、徐々にブッキングカーブに移行し、デイリーで見るべき指標も確定してきました。レベニューマネジメントのデイリー業務を型化することはうまく進んでいますが、残る課題はフォーキャストと料金表の最適化かもしれません。
堀口:PMSが持つレベニューマネジメント機能は、実務では使えないと言われてしまいがちです。例えば、1日ごとに表示されるため、半年間チェックしようと思ったら、180回クリックして、1日ずつ進めていって見ることになる。システム開発者が設計すると、どうしても運用者の意見が反映されにくく、細かいニーズに対応できないことが多いです。SQUEEZEでは「こういう機能が欲しい」と言ったらすぐに作ってしまうのでそのスピードには驚いています。
―ホテルを運営している強みがありますよね。
新井:堀口さんをレベニューマネジメント部門ではなく、テクノロジー部門のプロダクトチームに加わってもらったのは、このプロダクトを通じて、社内のオペレーション、ひいては業界全体の仕組みを変革していくためでもあります。
―プロダクトをより良くして、それを業界全体に披露していくという大きな構想の中で、堀口さんが入ってくれたということですね。
新井:その通りです。プロダクトを一緒に作り上げていくという強いメッセージとして発信していきたい。まずは社内で実践して、来年には販売を開始し、業界全体に対して貢献したいです。そして、自社でホテル運営をしていることのシナジーを生かし、業界でいちばん求められるプロダクトを創っていきたいです。
RevPARからGOPPARをゴールにしたい
―今後、開発において特に取り組みたい領域について教えてください。
新井:フォーキャストの精度向上や、さらに細かい価格設定を進めていきたいと考えています。料金ランクを細分化し、数円単位の値下げができるように調整したいですね。
堀口:イメージとしては、フィンテックの世界が近い感覚です。高頻度に望ましい状態に変わっていってもいいし、粒度はもう少し上げたいですよね。
新井:頻度はオペレーションの設定次第で調整可能です。株の自動売買のようなイメージですね。フォーキャストのロジックはすでに把握しているので、あとはそれを実装するだけで、今年中には実現できると思います。次のフェーズでは価格調整のメッシュをより細かくして、チューニングできる箇所を増やしていく予定です。また、団体やエージェント対応も外販には必要ですので、今年後半にそのあたりを進めるのがロードマップとしてあります。
―ある程度実現性の見通しは立っているということですね。
新井:「Minn」は”アパートメントホテル”というカテゴリですが、ホテル市場の中には他にもビジネスホテルやラクジュアリーホテルなどさまざまなカテゴリが存在します。自社が運営する一部のカテゴリのホテルに合わせた開発ではなく、他社の運営する様々なタイプのホテルにも導入してもらい、一緒にプロダクトを磨きこんでいくフェーズが必要と考えていました。ですが、堀口さんの知見や経験により、そのフェーズを省略できるかなと思っています。
堀口:レベニューマネジメントのゴールは一応RevPAR(Revenue Per Available Room、販売可能な客室一室あたりの収益)と定義されています。リーマン・ショック前までは稼働率重視が長いこと主流でしたが、価格変動を取り入れるようになり、RevPARで評価するのが適切だとされました。しかし、RevPARが同じでもADR(Average Daily Rate、客室平均単価)が高いほうが利益率も高くなるため、最終的にはRevPARではなく、GOPPAR(Gross Operating Profit Per Available Room、販売可能な客室一室あたり営業総利益)が目標になるべきだという考えもあります。実際に一部のシステムではGOPPARを取り入れ始めています。われわれもその領域にチャレンジしたいです。
新井:売上は広告費を投入したり、コンセプトルームを作れば確かに増えますが、その分コストも上がります。だから、本当に黒字かどうかをちゃんとチェックしないと、ホテル経営は難しいです。RevPARだけでなく、GOPPARも経営指標として重要だということを、プロダクトを通じて業界全体に広めていきたいと思っています。
堀口:これまでの営業系の売上管理システムは、コストをマスターとして管理するという考え方が基本でした。例えば、部屋ごとのリネン費を入力してくださいとか、宴会システムでは花代の原価を何%か入力してくださいって感じです。でも、こういう方法だと正確性も怪しいし、手間がかかるから結局入力されないことが多かったんですよね。それに対して、「suitebook」は経理システムからデータを引き出す仕組みを使っているので、手間もかからないし、ミスも少なくて、リアルなデータが得られるようになっています。
新井:PMSから会計システムにデータをアップロードしたり、逆に会計システムからPMSにコストを取り込んだりできます。一つのデータソースで、わざわざ手入力しなくても済むようにしたいと思っています。アパートメントホテルではコスト項目が少ないけど、お花や飲料などの付帯サービスがあると、それを全て設定するのは大変だし、変更があってもその都度対応は難しいだろうと思います。
ホテル経営をプロダクト開発に生かす
堀口:もう一つは、顧客満足度(CS)との関係ですね。ゴールデンウィークって『高い料金払って、混んでるし、さらに待たされる』ってよく言われますよね。だから、ちょっと料金を上げて混雑を減らす方がいいかもしれません。安い時期は満室を目指して、高い時期は少し余裕を持たせる感じで。テーマパークもファストパスの有料化を進めてますし。多くの人はCSを月単位で見がちなんですけど、日ごとにCSを分析して、RevPARとの関係を考えながら、どのKPIを基に判断するかまで掘り下げられるといいですよね。
新井:チェックインやチェックアウト、さらに旅の前後でお客様と接点を持てる自社プロダクトがあるので、宿泊料金と口コミの関連をレベニューシステムにフィードバックできれば、もっとレベルアップして、他ではできないことが可能になると思います。稼働率とか人数、泊数なんかの制約をどう設定するかも、レベニューマネジメントではすごく大事です。制約がないと、売れるだけ売ろうとして売上は上がるけど、オペレーションが追いつかなくなったり、コストや利益に影響が出たりします。だから、どうやって売るかが本当に重要なんですよね。
―社内の運営にも効いてきますね。
新井:まさに直結します。シフト管理も含めてすべてに関わってきます。プロダクトを活用することにより最適化されれば、ホテル経営においてインパクトが大きいといえます。
堀口:清掃シフトのプロジェクトに入ったことで、清掃要員の確保のロジックがないことに気がつきました。前月の15日の時点で翌月のシフトを組むのですが、清掃数を過剰に見込んでいました。そして当月になってシフト調整の必要が生じていました。そこで、いくつかの施設にフォーキャストを渡して、調整してみましょうかとなったんです。
新井:人手不足で業務が大変にならないように、普段は余裕を持ってシフトを組んでますけど、無駄が出るとその分コストが増えて利益に響いちゃいます。なので、フォーキャストと連動させて、別の視点からシフトの最適化をしたいと考えています。
―現場マネージャーが担当しているシフト調整や採用など、人材確保をプロダクトや知見でカバーできれば、もっと違う業務に時間をかけたり、クリエイティブなことができますね。
新井:シフト調整って、人が手作業でやるとどうしても無駄が出やすくて、もっと効率化できるはずなんです。シフトを最適化することで、経営にも大きなインパクトが出せます。自分たちでホテルを経営してるからこそ、いろんな課題に気づいて、それらが全部つながっているという視点で開発を進められるんですよね。それが『suitebook』が高評価をもらってる理由の一つだと思います。
―社内の人にもこのことを知ってほしいですね。みんなそれぞれ見てるところしかわからないので、全体の構想の中でやりたいこととか、今運営してるからこそ生きてることがあると思いますので。
新井:プロダクトやテックの人が現場の話やプロジェクトに直接関わるのは、本当に素晴らしいことだと思います。それが僕たちの開発にもつながるし、テックやデータの視点がないと、どうしても少しずつ改善するだけになってしまいます。非連続的で新しいアプローチはなかなか出てこないんですよね。だから、両方のチームが一緒にうまく進めていくのが理想だと思います。
OTA依存から脱却して、新たなマーケティング戦略にチャレンジ
―最後に、もう少し未来を展望したときの抱負をお聞かせください。
新井:来年以降、プロダクトができたら、それを使ってセミナーのような学習コンテンツを企画し広めていきたいと考えています。レベニューマネジメントをちゃんと学んだことがない人や、自分のホテルのやり方しか知らない人にとって、業界の標準を学ぶのって難しい状況なんです。だから、これをもっと広めて、レベニューマネジャーになれる人を増やしていきたいです。僕たちは『アカデミー構想』と言っていますが、まだまだ構想し始めの段階ではあります。長年業界にいる堀口さんは、この点をどう考えていますか?
堀口:この業界では、多くの人が接客を希望して入ってくるため、それ以外の業務を求められると苦労しているという話をよく聞きます。こうした問題をしっかり改善していきたいと思っています。レベニューの取り組みが終わったあとは、マーケティングにも力を入れたいですね。
新井:それはたしかに重要なポイントですね。人材不足の課題は今後も業界全体で深刻になっていくと思うし、長く活躍してもらうためには幅広いキャリアが描けることは大事です。
堀口:マーケティング、そしてアナリティクスにも力を入れたいですね。データを集計するだけでは分析とは言えなくて、そのデータから意味を見つけて、どんな対策を取るかを考えることが本当の分析です。そのためには、どんな観点が必要かを考える必要があります。社内で始めた勉強会も、そうした準備の一環として進めています。
新井:マーケティングに取り組むより、OTAにお金をかけた方が短期的には効果が出やすいです。でも、その結果として自社の比率を増やせず、結局は手数料を払い続けることになります。自社の比率を確実に上げるのが僕たちのチャレンジです。まだ明確な解決策は見えていませんが、レベニューの上位概念としてマーケティングに挑戦していきたいですね。
堀口:PMSのレベニューマネジメント機能として、最高のものを突き詰めていった結果、すごくいいプロダクトができて、「待ってたのはこれですよ」って言われるのが近い将来の目標です。最終的には、ホテル業界で働くことが楽しくて、お給料も良くて素晴らしい仕事だって言われるのが夢ですね。
ーPMSの機能開発の話にとどまらず、業界全体の課題を解決したいというお2人の熱い想いがひしひしと伝わってきました。
これからのプロダクト、そしてSQUEEZEのソリューションの大きな進化が楽しみです!
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