見出し画像

DXパートナー対談【JR東日本スタートアップ×SQUEEZE】 〜移動×宿泊の未来~

ホテル運営企画やソリューション連携にて、業界のDXを推進していくパートナー企業の方々とSQUEEZE CEO舘林による「DXパートナー対談」企画!

今回はJR東日本の子会社でベンチャーへの出資や協業を推進するCVCの、JR東日本スタートアップ株式会社の隈本伸一さんにご登場いただきました!

【プロフィール】
〈隈本 伸一 くまもと しんいち〉氏
JR東日本スタートアップ株式会社 シニアマネージャー
慶應義塾大学総合政策学部卒業後、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)入社。 入社以来、主に駅ナカや駅ビル等を展開する生活サービス事業部門に所属。飲料ビジネス会社(JR東日本ウォータービジネス)の新規立ち上げや、地域活性化プロジェクトの推進を行い、直近はJRE POINTのグループ内共通ポイントプログラムの立ち上げ推進等、事業再編や新規事業のプロジェクトを中心に従事。 2018年2月より、オープンイノベーションによる共創活動をするJR東日本スタートアップ株式会社の立ち上げを行うと共に出向し、スタートアップ企業との協業や出資等による支援を推進。

JR東日本スタートアップとSQUEEZEは、JR東日本グループのホテル事業のDX化推進、およびスマートホテル事業でのさらなる顧客体験の向上に向けて連携しています。

始まりは「JR東日本スタートアッププログラム2020」での採択

 ― まずは協業のきっかけを教えてください。

JR東日本スタートアップ・隈本氏(以下、隈本):JR東日本グループでは、スタートアップとの共創により、新たなビジネスやサービスの実用化を目指す「JR東日本スタートアッププログラム」を2017年にスタートしました。2020年にこのプログラムに応募していただいて、採択したのがきっかけですね。

SQUEEZE代表・舘林(以下、舘林):2019年に隈本さんにお会いしてプログラムについて伺ったんですが、その年は応募に間に合いませんでした。そこで、1年間準備して満を持して応募することができました。2020年末からJR東日本グループが保有する宿泊施設における非対面チェックイン(モバイルチェックイン)の実証実験などを重ねてきました。

隈本:コロナ禍もあり、なかなかPoCもやりづらい状況ではあるのではと思いつつ、今までのホテルのやり方を変えていかなければいけないという流れもあり、それに合った話ができたことが大きいですね。

舘林:本体の主な事業とどうシナジーを作るかが重要なプログラムであり、ホテルの運営管理システムの根幹に入っていくために、実証実験の場所の選定もなかなか大変でしたが、隈本さんに当たっていただけたのでうまく進めることができました。 

隈本:根幹に入りすぎるとスタートしづらいので、チェックインのスマート化だけをまず切り離して、どこで実証実験できるかを当社グループのホテルで検討しました。

舘林:大手企業とご一緒するときに、大きい変更から切り替えるのは難しい。薄くセンターピンを入れて広げていくか、全く新しい実証実験場(会社やプロジェクト)を作って出島的にやるか、この2つしか最初の入り込みはないと思います。今回はモバイルチェックインや非接触・非対面の需要への対応を可視化するプロジェクトを提案し、JR東日本さんのホテルでは持っていないソリューションだったため、双方マッチして入らせていただけました。

画像1
『JR東日本スタートアッププログラム2020』参加企業様と
画像2
『JR東日本スタートアッププログラム2020』でのプレゼンの様子(舘林)

ホテルメッツ福島で非対面でのチェックインを実証実験

― 当時SQUEEZEは非対面チェックインを可能にする「checksmart」を開発中でしたね。

隈本:プログラムの主旨も、今まであるものをグループに広げていくというよりは新しいビジネス、プロダクトで新しい機能を一緒に創り上げて社会実装していくことが肝です。
開発中のものを社会実装するためのファーストカスタマーとしてJR東日本ホテルメッツ福島を活用していくことになりました。コロナ禍でしたが、現場のメンバーとよく連携をとっていけたので、支配人も含めてマインド醸成などは非常にうまくいったと思います。

SQUEEZE取締役・関根(以下、関根):「checksmart」の開発では、「宿泊ゲスト自身のスマートフォンでチェックイン作業が完結する」ことを目指しました。自社運営ホテルは比較的規模の小さい施設が多いので、checksmartに関するPoCを一緒に進めていく中で、大きな施設でのフィードバックは大変貴重でした。私は福島出身で、地元というのも最初に打ち解けるためのフックとしてよかったと思います。

画像3
『JR東日本ホテルメッツ福島』様での実証実験の様子

舘林:JR東日本グループの日本ホテル株式会社では、「東京ステーションホテル」「メズム東京、オートグラフ コレクション」「メトロポリタンホテルズ」「JR東日本ホテルメッツ」などのブランドを展開されています。ブランド設計も日本ホテルさん側でやっていて、ビジネススキームやビジネスモデルも複雑で、全体のDXを考えていかなくてはいけない。さらにスタートアップとのマッチングもあって、隈本さんはどのように考えておられますか?

隈本:確かに多岐にわたっていて複雑です。日本ホテルがメインですが、メッツやメトロポリタンを運営している会社が東北地方にもいくつかあって、最終的には日本ホテル側にどうアプローチするか、周りから攻めていって、まずはトライアルができそうな施設を探しました。JR本体の組織ともうまく連携できたと思います。スタートアップとの連携では、まずは小さくPoCを始めていくことが大事です。まだまだ文化醸成ができていない部分もあるので、小さいところから始めて企業やプロダクトを知ってもらい、理解してもらいながら入り込んでいく。コミュニケーションがとても重要になります。

舘林:プロダクトアウトすぎてもうまくいかない。

隈本:プロダクトアウトがものすごくとがっていれば良いが、そうじゃないケースが多い。いかにリレーションを作りながら新しいものを作っていけるかがキーになります。

舘林:プロダクトを自社で作っていて、かつ実際にオペレーションも担っている点がSQUEEZEの場合は評価していただけたのかなと思いました。現場を理解しやすいですからね。

隈本:半年から1年ぐらい伴走して、出資させてもらえば大義名分もできて、グループ内営業のような要素で後押しができます。

舘林:とにかく頼らせていただいてご一緒できたことがよかったです。今後「JR東日本スタートアッププログラム」に入ってくる方へのアドバイスは、いかにサポートをもらえるように相談してコミュニケーションをとっていくかだと思います。

「JR東日本スタートアッププログラム」でスタートアップ同士のつながりも生まれている

 隈本:スタートアップの経営者は時間が命だから、お互いが尊重していかないとうまくいかないプログラムだと思っています。

舘林:ここまで伴走してもらえるようなプログラムは他にないですよね。

隈本:皆さんにそう言っていただけることが多くてありがたいですね。自分たちで事業を一から作っているわけでもないし、間を取り持ちながらどんどん新たな価値を生み出せるのはありがたいなと思います。もともとJRの人間なので、VCのような経営アドバイスはできませんが、グループの内情がある程度わかっていて、うまくスタートアップとつなげるような役割が、JR東日本スタートアップとしての価値なのかなと思って推進しています。

舘林:スタートアップ同士のつながりもできていて、われわれと同じ年にスタートアッププログラムに採択された、さとゆめさんとは観光庁のアドバイザー派遣を通じてプロジェクトを一緒に行っています。スタートアップ同士のマッチングやDXパートナーとか、アルムナイネットワークなどを作っていければいいと思います。

― 実証実験の具体的な成果を教えてください。

舘林:実証実験は6〜7カ月で、とにかく最初はインプットするしかない。オペレーションがすでに確立されているので、どう更新していけばいいのかを模索しました。積み上げられてきたオペレーションがものすごいなと感じました。

関根:確立されたオペレーションに対してどんなアプローチをすべきか、当社運営施設とは規模が違うので、出てくる課題も違ってきます。現場のメンバーにも会議に入っていただいて、フィードバックをもらいながら作っていきました。

隈本:フィードバックをすぐに反映したり、素早く改善したり、というのがスタートアップとの連携の醍醐味なのかなと思います。 

舘林:最初は現地でのQRコードでのチェックインのみだったものが、その後事前チェックインなどに展開していきました。基幹システムとの連携は難しさがあって、まだ課題も残っています。

隈本:基幹システムを中心にオペレーションが組み立てられている中で、どういう付加価値、メリットを提示していくのかが重要でした。前向きにチャレンジしてもらえたのが良かったと思います。

オペレーションを回しながら常に改善し、顧客体験の向上を追求

 舘林:JR東日本グループで実際にSaaSを導入する上でのハードルは何ですか?

隈本:大変なのはセキュリティですね。特に基幹システムとの連携が必要となると、なかなかすぐにできない部分もあります。オンプレミスで作り込む文化が根強い会社で、ここ数年変わってきてはいるものの、まだ残っているので、SaaSのスタートアップと連携する際にそういった企業文化の壁もあるとは感じます。
新しい文化をJR内にどう広げていけるか?世の中の優秀なSaaSをどう活用できるのか、はこれからの挑戦でもあります。

舘林:実証実験では、200〜300の非対面チェックインにトライしてきました。所要時間などのKPIを設定して、ゲスト目線でどうかなどをフィードバックさせてもらいました。事前チェックインに完全に移行するのが難しい場合、エクスプレスレーンを設置して、選択できるようにする。ゼロイチの取り組みだけでなく、いろいろな選択肢から選べるような状態をまずは目指しました。コロナ禍にあってもピーク時は行列ができる状態だったので、インバウンドが回復した時にはもっと課題は出てくるので、今のうちにスムーズなチェックインができるようにしておきたいですね。

隈本:スマートチェックイン専用プランを出してみたりもしました。コロナによる稼働減で現場としての体感(混雑緩和に対するインパクト)は思ったようには醸成できませんでしたが、将来に向かってのチャレンジはできたと思います。実証実験は終わったけど、今後の将来像を引き続き描きながらやっていくフェーズになったと思います。

舘林:省人化による費用削減の価値だけでなく、より良いゲスト体験が生み出せるようにしていきたい。そのバランスを保てるように、両方を達成できるようにチャレンジしたいと思っています。

隈本:出資をした決め手も、単なるSaaSベンダーではなく、オペレーションを回しながら常に改善し、顧客体験に関しても追求することができるのがSQUEEZEの特徴で、顧客と接し続けられる場所を持っていることが大きかった。

関根:実際に「駐車場の利用」や「領収書の宛名」など、顧客情報を先に知ることができる機能が欲しいというリクエストをいただいて、開発に生かすことができました。

隈本:システム会社として、「なぜ必要か」という本質を含めてヒアリングしながら一緒に考えられるのがすごく良いと思いました。

舘林:顧客の課題の解像度を上げることを全社で大事にしています。でも入り込みすぎて要望を聞きすぎると、要望を叶えるだけになってしまう。全体を見た時に何が必要なのか、将来のオペレーションを構想して逆算した時に、その機能が本当に必要なのかが重要です。

隈本:運営者側の要望はかなりピンポイントだったりして、要望を聞くばかりでは他との整合性が取れなくなったり、その時の短期的な要望であったりしますね。SQUEEZEが常に運営者目線を高く持ってもらえると、本質的かつ長期的な改善になるのではないかと思います。

対談の様子(左上:舘林、右上:隈本様、中央下:関根)

移動×宿泊を連動させた新しいゲスト体験の創出を目指す

― 今後、JRグループとSQUEEZEの連携はどのように進むでしょうか。

舘林:JRさんがもつアセットである移動データと宿泊を掛け合わせた時に何ができるかを、引き続きプロジェクトを走らせていく中で、今あるものからの積み上げの改善だけでなく、将来構想ができるようにしていきたいです。

隈本:JR東日本グループのホテル事業は良い意味でいろいろな人手を介して、それなりのホテルブランドを作ってきました。市況の変化もある中で、新しいホテルの形を作っていかなければいけない。いろいろなインフラを持ってはいるので、うまく連携できればと思います。鉄道の移動×宿泊は切っても切れない。いかにシームレスにつないでいくか。顧客体験を損なわずに、スマートにオペレーションを回して、世の中に新しい価値を提供していきたい。

舘林:完全にDX化した全く新しいホテルを作ってみたいですね。

隈本:スマートホテルという形で別で切り出してできているのは良いですね。新しいブランドを作っていきましょうという進め方ができます。出島的に新しいオペレーションを作っていける。いかに成功事例を作っていけるかが大事ですね。

関根:今まさに進んでいるプロジェクトは、現状のオペレーションの枠を外して、将来像から逆算してどうプロダクトを作るか、どうオペレーションを作るかを連携して作っています。いろいろな課題が山積みですが、オペレーションをやっている強みを生かして伴走していきたいです。

隈本:ホテル業界ってシステム化されているようでされていない不思議な業界だなと思います。顧客体験の質を下げずに、裏側のオペレーションをどうスリムにしていけるかが、非常に重要なポイントで、持続できる体力をどうつけていくかです。

舘林:Suicaのようなプラットフォーム経済圏がすでにある中で、次はSuicaがスマートロックに代わりになったり、チェックインの認証になったり、そんな世界がすぐそこにあります。子ども見守りサービス「まもレール」のように、Suicaで改札を出たら情報が通知されるような機能をホテルに転用すると、事前チェックインが完了した方が改札を出たらフロントに通知がいくようになったり、先に電気をつけておくなど、移動と宿泊を連携させたさまざまな世界が生まれます。

隈本:DXというと省人化、効率化という側面がフューチャーされますが、ホスピタリティの面でももっと新しい価値を生み出すことができます。清掃効率化に関しても、ゲストへの提供価値として、何時でもチェックインできるなどの柔軟性を高める側面もありますよね。

舘林:JR東日本グループさんのもつ不動産や顧客網に、SQUEEZEのもつスマートホテルの運営ノウハウを掛け合わせて、移動から宿泊までの体験価値の向上を目指すとともに、DXの推進スピードのさらなる向上を目指していきたい。今後ともよろしくお願いいたします。

対談の様子(左上:舘林、右上:隈本様、中央下:関根)


〜 2022.9.7追記 プレスリリース配信! 〜


本取組みをきっかけとしたJR東日本グループとの協業事業の1つ目として、日本初のSuicaを活用したスマートホテル「ホテルB4T」における「suitebook」の採用を発表させていただきました。 

・当社とJR東日本スタートアップ社との共同プレスリリース(2022.9.7)
https://squeeze-inc.co.jp/archives/1283/

・JR東日本グループによるプレスリリース(2022.9.6)
https://www.jreast.co.jp/press/2022/20220906_ho01.pdf


最後まで読んでいただきありがとうございました!最新の事例や会社紹介は以下より発信しております!